椅子に座ってできる「いろは体操」で、体の基本機能を整えましょう!

「いろは体操」って、どんな体操なんでしょう

 「いろは体操」とは、ヒトの体幹=コアを整える〝コアコンディショニング〟のひとつです。〝インナーマッスル(深層筋)〟の中でも一番深層部にある〝インナーユニット〟と呼ばれる筋肉(横隔膜・腹横筋・骨盤底筋群・多裂筋)を整えることを目的としていますが、実はこの〝インナーユニット〟は、ヒトとしての基本機能である〝直立二足歩行〟に大きく影響しているものであり、この当たり前の動作を再学習するためのプログラムなのです。
 赤ちゃんは生まれて初めて〝泣く〟という運動をしてから、仰向け、寝返り、うつ伏せ、四つ這い、立ち上がり、立って歩くという過程を経て、直立二足歩行という基本機能を身につけていきます。ところが、体幹の機能が弱くなると姿勢が崩れ、徐々に正しい直立二足歩行ができなくなります。姿勢が崩れることは、膝や肩に支障をきたし、それがシニア層の慢性的な膝痛や腰痛にもつながります。誰もが赤ちゃんの時に一度は経験している動作の初歩に立ち返り、再学習することで、体幹を整えて安定させ、ヒト本来の機能を呼び戻そうというのがこのエクササイズのポイント。基本中の基本を学ぶということから「いろは体操」と名づけられました。

鍛えるのではなく〝整える〟これが「いろは体操」のコツ

 エクササイズというと、しっかり行わないと意味がないように思われがちですが、さまざまな〝コアコンディショニング〟の基本はあくまでも〝整える〟ことにあります。とりわけ「いろは体操」は、シニアの方々にも簡単に安全に行えるよう開発されたプログラムですので、小さな動きで、自分が気持ちよい範囲で行うだけで十分に意味があるものです。むしろ、疲れてしまうほどやると意味がありません。それは、若干の無理をすることでも、その動きをアウターマッスル(表層筋)がサポートしてしまうからです。こうした点でも〝コアコンディショニング〟は、他の運動を行う前の準備体操等とも競合することがなく、この簡単なコンディショニングを行うことで、その後の運動のパフォーマンスが向上する結果にもつながります。
 日々のコンディショニングにも、他の運動を行う時のアプローチとしても、老若男女問わずすぐに実践できるのも、「いろは体操」の利点なのです。

体幹を整えることの大切さ。それは日常の動きに現れます

 運動をすることを心がけている方にとっては、「いろは体操」は少々物足りないかもしれません。その物足りなさこそ、実は「いろは体操」の目的でもあるのです。
 この物足りないエクササイズを続けることで、〝ヒトが本来持っている機能を目覚めさせてあげること〟こそ、コアコンディショニングの真髄。身体機能が衰えてきたシニア層には、忘れてしまった機能を呼び戻すきっかけにもなりますし、これから歳を重ねていく方にとっては、機能を維持するためにも役立ちます。
 「いろは体操」の講座に参加された方の忘れ物の中に〝杖〟がありました。来る時には杖をついてきたのに、帰りには杖なしで帰られてしまったのですね(笑)。
 こうして体幹を整え、日々安定させることで、自分の体をうまくコントロールできるようになります。また、体幹が安定すると足裏の感覚がするどくなりますから、転倒防止にもつながりますし、自分の体をしっかり感じることができることは、脳の活性化にも役立ちます。
 何よりも簡単なエクササイズですから、「私にもできた!」「まだまだイケる!」と、この後の生き方が前向きになるきっかけづくりにもなります。
 ぜひ今日から、テレビを見ながらでも、公園のベンチでひと休みしながらでも、椅子に腰かけているその時に、「いろは体操」を実践してみてください。

「いきいき通信」vol.92より転載