#プロのひと工夫

いつものスープが主役級に。スープ作家が教える簡単工夫術

2023.1.25
忙しい毎日、料理はできれば効率的に、無駄なくこなしたいもの。いつもキッチンに立つみなさんのそんな切実な思いにこたえるとっておきのアイデアを、その道のプロや賢者に伺います。

今回ご登場いただくのは、旬の食材を使ったシンプルでおいしいスープはじめ、料理や暮らしのアイデアを発信し続けるスープ作家の有賀薫さん。毎日、楽しく無理なくキッチンに立つ秘訣についてお聞きしました。

インタビューした人
スープ作家
有賀 薫さん

約10年間、毎朝作り続けてきたスープを土台に、シンプルで作りやすいレシピや、暮らしに添った料理を発信。最新刊『ライフ・スープ くらしが整う、わたしたちの新定番48品』(プレジデント社)のほか、『朝10分でできる スープ弁当』(マガジンハウス)など著書多数。

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料理をする人にも食べる人にもやさしいシンプルなスープ

よく手作りスープをふるまってくれたというお父さまの影響もあり、もともと汁ものがお好きだったという有賀さん。スープ作家として知られるようになったのも、やはりご家族のために作っていたスープがきっかけだったそう。

「受験を控えた息子が、朝『スープできたよ~』と声をかけると、すんなり起きてきてくれて。そんな風に日々作っていたスープの写真を撮って、SNSに投稿していたんです。すると写真を楽しみにしてくれる人が増えてきて…」

1年後、撮りためた365日分のスープ写真を集めて開いた展覧会が話題に。以来、少しずつ仕事の依頼が来るようになったのだとか。
そんな有賀さんが、“食卓の主役”としてスープを意識するようになったのは、料理を仕事にするようになってからのこと。日々の食事の支度に苦労する声がたくさん届くようになり、スープの研究をはじめることに。

「手軽で安あがり。野菜もたっぷりとれて栄養バランスも考えやすい。しかもひと皿で食べられて、あたたまるしお腹がいっぱいになるスープはとても合理的ですよね。家庭食に求められる要素のすべてを満たすものがここにあると思ったんです」

料理の世界に足を踏み入れるまで、主婦として長く家族を支えてきた有賀さん。そのお言葉のあちらこちらに、料理を作る人へのやさしい眼差しが感じられます。

すぐ試したい!いつものスープがおいしく見違える5つの工夫

有賀さんの手にかかれば、普通の食材を使った普通のスープが、主役級のごちそうに。まるで魔法のように料理の幅をグンと広げる、とっておきのコツを伺いました。

ポイント1・無限にバリエーションができる「スープの方程式」

はじめに教えていただいたのが、「これをもとに具材や味付けを決めれば、手軽に工夫できてマンネリにならない」という「スープの方程式」。

具材×だし×オイル×調味料=おいしいスープ

具材は、ひとつでもふたつでも、冷蔵庫にある残りもの全部入れても。慣れないうちは、肉や魚など動物性タンパク質をひとつと、野菜をひとつからはじめるのがおすすめだそう。
だしは、うま味の強い旬の野菜や肉など、具材から引き出すのが有賀さん流。その上で、味をみながら、「コンソメ」や顆粒だしなどで味を調えるようにしています。

オイルは、炒めたり風味づけしたりするのに使います。たとえば、野菜を茹でる前に汗をかかせるようにじっくり炒めると、えぐみやクセがとれて、まろやかな味に。スープの国籍を決めるのもオイルの大切な役割です。

調味料は、みそ・しょうゆ・塩が基本。あとは酢・砂糖などを組み合わせて、味を調整します。「なすのおみそ汁にちょっと砂糖を入れるだけで、ご飯のすすむ味になるんです」と有賀さん。

ポイント2・いつもと違うひと工夫で新しい味や食感に

いつもの具材も、切り方を変えるだけでまったく違う味に。

「千切りしたじゃがいものおみそ汁、おいしいですよ。スライサーにかけたじゃがいもを細く切って水に放ち、1〜2分さっと火を通せばシャキシャキとした食感が楽しめます」
たとえば、「コンソメ」を「チキンコンソメ」にかえてみるなど、普段とちょっと違う調味料を試してみるのもおすすめ。

新しい調味料を使うのはちょっと勇気がいるものですが、思いのほか違う味が楽しめるそう。食材の組み合わせを考えるよりずっと手軽で失敗のリスクもありません!

ポイント3・ちょっといいキッチンツールで、一段とおいしく&楽しく

楽しく料理をするのに欠かせないのが、使い勝手のいいキッチンツール。いつもお使いのもののなかから、とくに「これがないと調子が出ない!」というアイテムを紹介いただきました。

柳宗理の「レードルS」
横長なフォルムが特徴の柳宗理のおたま「レードルS」。スープが注ぎやすく、小さなマグカップなどにもうまく盛りつけられます。したたりにくく、作業効率を高めてストレスを軽減してくれる優れものです。
スープジャー
朝10分で作ったスープをジャーにつめておけば、勝手に保温調理!じっくり煮込まれて、お昼頃にはあたたかいスープ弁当が食べごろに。

あとはパンかおにぎりひとつあれば、お腹いっぱいに。いろんなおかずをお弁当箱いっぱいにつめる手間もいりません。

ポイント4・盛りつけと食べるタイミングの調整でおいしさ3割り増し

ちょっとした盛りつけの工夫が、料理を断然おいしくしてくれます。

「これを食べてほしい!」と思うメインの具材を、目につきやすい手前に置くのがポイント。箸でちょっと具材を調整するだけで、見栄えがグンとよくなります。
また、写真を撮るときは、「できたてあつあつ、湯気が立ちのぼっている瞬間を収めるようにしています」と有賀さん。食べる直前によそうよう心がけることも、スープをおいしく食べる大切なポイントだと言えそうです。

ポイント5・スープかけごはんでお手軽「一汁食」

近著『なんにも考えたくない日は スープかけごはん で、いいんじゃない?』(ライツ社)でもご提案されている、ひと皿完結型の食事スタイル。

ご飯にスープをかけるだけと、とっても手軽なのに満腹感のある一皿に。しみしみのご飯がおいしく、アレンジも自由自在。料理の負担を大幅に軽減してくれる、食べる人にも作る人にもやさしい、いいことずくめなアイデアです。

編集部でもやってみた!

スープかけごはんのひとつ、「パセリのしらスープ」を編集部でも作ってみました。

耐熱皿に入れた材料をレンジでチンして、できたスープをご飯にかけるだけ♪本に書かれている通り、本当に3分でできあがりました。

驚くほど手軽なのに、おいしくて後片付けも簡単☆有賀さんのレシピらしく見た目もよく、「スープ作家の有賀さんに教えていただいたスープかけごはんだ!」と思うだけで、不思議と行儀が悪い感じも手抜きな感じもせず、おいしく&楽しくいただけました!
料理することの負担がすっと軽くなって、食卓や暮らしがもっと自分らしくなるスープのある暮らし、ぜひお試しあれ!

<記事転載元>
「AJINOMOTO PARK」PARK MAGAZINE
おだいどころ虎の巻#5有賀さん流“スープのある食卓”